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セミナー・シンポジウム及び入試情報

2021-10-08

最先端研究セミナー

※ジョイントセミナーあり

講演者: 古谷 博和(高知大学医学部脳神経内科 教授)

演題:幽霊はどこにいる? 脳と怪談の不思議な関係

日時: 2021年10月8日(水)16:05-16:50

※ Zoom開催。URLはMoodleの「HIGO最先端セミナー」にてご確認ください。

https://md.kumamoto-u.ac.jp/course/view.php?id=90416

抄録:
幽霊や妖怪譚は世界各国、どの民族にもみられるものですが、これまで民俗学的、心理学的な方法以外、殆ど科学的な検討がなされていませんでした。今回脳神経内科の立場から、これらの話に対して神経学的に検討を行ってみました。

対象・方法:このような検討を行う際に問題になるのは、信頼出来る資料をどこまで集める事ができるかです。そこで対象としては明治時代の対面聞き取り調査として信頼性の置ける柳田国男の「遠野物語」や民俗学者が収集した主に明治時代以降の出典のはっきりしている怪談集「日本怪談集」(幽霊編)(妖怪編)を中心にしました。一方パーキンソン病およびパーキンソン関連疾患の患者さんには睡眠障害に伴う幻覚を体験することが多く、それらは (1) ナルコレプシーで見られる入眠時幻覚に近いもの、(2)REM睡眠行動異常症や非REM睡眠パラソムニア、(3) 突発性REM睡眠(高速道路催眠現象)に近いもの、(4) レビー小体型認知症に良く見られる純粋視覚幻覚の4種類です。今回信頼出来る幽霊・妖怪譚をこれら4種類の分類基準で分類しました。

結果:上記分類基準に基づき「日本怪談集」(幽霊編) (151話)を分類すると、入眠時幻覚(21%)が最も多く、次いで突発性REM睡眠(高速道路催眠現象) (20%)と純粋視覚幻覚(20%)がそれに次ぎ、幻聴(9%)、予知夢(9%)なども認めました。一方「日本怪談集」(妖怪編)の中にREM睡眠行動異常症や非REM睡眠パラソムニアや高次脳機能障害、片頭痛患者が体験する体感幻覚などを疑わせる話が散見されました。

結論:以上の分析により、所謂幽霊譚の60%以上がパーキンソン関連疾患の患者さんにしばしば見られる睡眠障害に伴う幻覚に近い事がはっきりとしました。つまり、パーキンソン関連疾患で幻覚が生じる病態機序に近い機序が正常人におこると、幽霊譚、妖怪譚として認識される可能性があると考えられます。また高次脳機能障害も幽霊譚、妖怪譚の原因である可能性も示唆されました。

参考文献:
1.      古谷博和.パーキンソン病と幽霊譚との関係について.Frontiers in Parkinson Disease 2014, 7(2), 56-58.
2.      Watanabe A, Furuya H. Sleep-Related Hallucinations and Ghost tales.
In: Encyclopedia of Sleep and Dreams. Vol 2., ABC CLIO. CA, 2012, pp.
708-711.
3.      Watanabe A, Furuya H. Pathogenic mechanisms of sleep hallucinations
and their relationship to ghost tales. In Rapid eye movement sleep: New
Research (Bando K, Hotate A eds.) Chap. 5, 1st ed. Nova Science Pub, New
York, 2012, pp 85-152.

※ジョイントセミナー 15:20-16:05

講演者: 北條 浩彦(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 神経薬理研究部 室長)

演題:加齢に伴って減少する血中マイクロRNA199は、筋肉の再生や筋萎縮抑制そして筋疾患治療に効果がある

講演概要:
若いネズミと年老いたネズミの血管を外科的手術で結合して同じ血液循環系にするパラバイオーシスという実験がある。この実験結果は大変興味深く、若いネズミは老化が進み、年老いたネズミは若返った。そして、体を巡る血液の中に老化促進やアンチエイジング効果をもった因子が存在することを示唆した。我々の研究グループは機能性RNAであるマイクロRNA(miRNA)について研究を行っている。miRNAは様々な遺伝子の発現制御に関わる小さなRNA分子である。このmiRNAは細胞の中だけでなく、細胞の外(例えば血液の中)にも存在し、その一部はエクソソームと呼ばれる小胞に包まれて細胞間コミュニケーションの重要なメッセンジャーとして働いている。我々は、若いマウスと年老いたマウスの血液の中に存在する細胞外miRNAについて調べた。そして、加齢に伴って減少するmiRNAの中から筋肉の再生や老化した筋肉の萎縮を抑制するmiR199を発見した。さらに、当該miRNAを遺伝性の筋疾患である筋ジストロフィーのモデルマウス、mdxマウスに投与すると、筋力の回復が起こることを見出した。

若いネズミと年老いたネズミの血管を外科的手術で結合して同じ血液循環系にするパラバイオーシスという実験がある。この実験結果は大変興味深く、若いネズミは老化が進み、年老いたネズミは若返った。そして、体を巡る血液の中に老化促進やアンチエイジング効果をもった因子が存在することを示唆した。我々の研究グループは機能性RNAであるマイクロRNA(miRNA)について研究を行っている。miRNAは様々な遺伝子の発現制御に関わる小さなRNA分子である。このmiRNAは細胞の中だけでなく、細胞の外(例えば血液の中)にも存在し、その一部はエクソソームと呼ばれる小胞に包まれて細胞間コミュニケーションの重要なメッセンジャーとして働いている。我々は、若いマウスと年老いたマウスの血液の中に存在する細胞外miRNAについて調べた。そして、加齢に伴って減少するmiRNAの中から筋肉の再生や老化した筋肉の萎縮を抑制するmiR199を発見した。さらに、当該miRNAを遺伝性の筋疾患である筋ジストロフィーのモデルマウス、mdxマウスに投与すると、筋力の回復が起こることを見出した。

担当分野:幹細胞誘導分野 江良(内線:6589)

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