第3回熊本知識者円卓会議(熊本版ダボス会議)でHIGO生が発表を行いました
日時: 12月26日(木)10:00-12:00
場所: ホテル日航熊本 5F天草の間
テーマ: 「日本、そして熊本は世界に対して何をなすべきか?」
ディスカッサント:
甲斐隆博氏(株式会社肥後銀行取締役頭取)
蒲島郁夫氏(熊本県知事)
幸山政史氏(熊本市長)
田川憲生氏(ホテル日航熊本社長)
谷口功氏(大学コンソーシアム熊本会長・熊本大学長)
日本から世界へ、質の高い医療と看護サービスの普及
グローバルな規模での高齢化に伴い、高齢者に対する医療や看護サービスへの関心が高くなっている。日本は先進的な医療・看護のレベルを有しており、熊本県においても医療機関はその数も多く、質も高いものであることは注目に値する。その他の医療機関と世界的に協働し、情報共有を図って行く事は、世界の医療水準の向上に大きく資するものとなるであろう。各国の間に存在する医療格差に関して、こうした医療格差を縮小して行く上で、日本の医療資源の活用は有効なものであり、同時に、それは高い水準の医療に向けた統一的発展を達成するであろう。例えば、政府は外国人患者に対するより優れた医療、電子医療システムを作り上げることを可能にする等の具体的な政策を推進することができる。加えて、看護システム、看護施設、看護師をはじめとする日本の良質な看護サービスは他国が学ぶに値する価値を有している。看護レベルの向上に向けて、日本は他の国々を対象に、その先進性や人間中心主義的な施設を売り込む事ができ、また外国人学習者向けに看護学校を設立する、あるいは優れた看護関連書籍の外国語への翻訳などによって、質の高い看護師の養成を促す事ができる。そして同時に、日本や熊本は世界中の看護サービスの改善に役立つであろう看護師向けの世界標準の認証を発行できる可能性を持っている。
熊本そして日本はグローバル社会に対して何をすべきか?
グローバル社会になるよう適合し、その他のグローバル社会と競合している国家は、何よりも地位を確立し、資源を開発し、経済成長を高めていかなければならない。日本における国民1人当たりのGDP成長率は低下し続けており、日本は国民1人当たりのGDPランキングにおいて世界第22位の位置に置かれている。これは高齢化と労働人口の減少に端を発している可能性がある。
多くの先進工業国が高齢化の問題に直面しているが、出生率の低下により、高齢化の問題は日本ではとくに著しい。このことは労働年齢人口が減少し、高齢者介護や福祉への支出が増加し、イノベーションも低下し、経済的アウトプットが減少していくことを意味している。労働力参加率は2つの極めて重要な手法で増加する可能性がある。それは女性の労働参加率を向上させること、そして能力の高い移民労働者の参加を増加させることである。現在、職場環境における女性にとっての成長機会の減少、尊敬すべき女性の助言者(メンター)の不在の結果、大学院卒の日本人女性のわずか25%のみが雇用されている状況である。女性のキャリアを促進する雇用法を強化・促進することは、労働人口を820万人、そして経済生産を15%高めるだろう。
また、日本において能力の高い移民労働者に対しする訓練や支援を行うプログラムを確立する事で、日本の労働人口、熟練した介護者の人数を増加させ、グローバル競争の時代において、より多くの日本企業に対外貿易の可能性を与える、そして日本への観光も増加し、その結果、日本の経済生産を高めることになるだろう。
九州の国際都市、KUMAMOTOを目指して
アジア諸国に近いという熊本の地理的特性を生かし、今後アジアにおける熊本のブランディングを促進していく為には、経済成長著しい東南アジアにより力を注いでいくことが重要となってきている。現に、九州新幹線の開通やそれに続くくまモンの活躍、そして熊本の地理的特性から、特にアジアにおける熊本の知名度は少しずつ上昇している。観光客だけでなく県内の大学留学生においても、中国や韓国のみならず、フィリピンやタイ、マレーシアなどといった東南アジアの国々からの留学生や研究者は着実に増えてきており、熊本は国際色豊かな都市を形成してきている。
一方、東南アジアの国々において戒律の厳しいイスラム教徒特有の食文化、 “ハラル”の人口は十数億人ともいわれており、ハラルはアジアにおける企業進出や観光客誘致、研究者誘致においては避けては通れないものとなっている。しかしながら、ハラル産業は一大マーケットとなっていながらも、その戒律の厳しさ故に、企業のハラルマーケット参入は大変困難を強いられている。
大学においても、イスラム教徒の学生は、400年以上の歴史を誇る熊本城とそれを取り巻く繁華街、そして車で約一時間でたどり着ける世界級の阿蘇や天草などの観光資源、国内トップレベルの地下水やお米といった農産物、そして熊本モデルに見られるその医療体制など、都市と自然の調和した、大都市にはない独自の歴史•文化をもつ熊本生活に非常に満足している反面、ハラルを取り扱った企業やスーパーの数は希有なため、日常生活において特に食事の面で困難を強いられているのが現状であり、ハラルビジネスの難しさが伺える。
東南アジアからのアクセスのしやすさ、そして世界レベルの観光資源を生かし、今後のアジアにおける熊本の存在感をより強固にしていくためにもハラルビジネスに特化した新しいタイプの産官学一体の態勢を作ることが大切になってくるのではないだろうか。まずはイスラム教徒が多く、また熊本により近いマレーシアやインドネシア、フィリピンを中心に現地調査を行い、イスラム教徒に配慮した食事の研究・普及を図ることが、観光や医療、農業や工業などの新たなツーリズムのニーズを創造していく第一歩であると思う。そうすることで、より多くのアジアの方々に熊本に来て頂き、また熊本の地場産業をより活性化させ、普段私たちが食べている熊本でとれたものを使った最高品質の和食や郷土料理を、ハラル食として提供できるのではないだろうか。熊本から総力を挙げてイスラム教徒の方々も安心して来ることのできるまちづくりを全国、そして世界中に先駆けて推進していきたい。
詳しくは、以下の熊本コンソーシアムのホームページもご覧ください。
http://consortium-kumamoto.jp/?page_id=3692