Internship
インターンシップ
■ネパールインターンシップ 2017.8.18-8.25
■参加者
HIGOプログラム(学生9名、特任教員2名)
■目 的
ヒマラヤ山脈などの自然が豊富で、海外からの観光客も多いが、政治・経済が不安定であるため、未だにアジア最貧国の一つであるネパール。本インターンシップでは、現地の歴史や政治・文化、医療保健システムを学ぶ。また、政府、大学、民間組織の訪問を通じて、医療政策、疾患・伝統医療の研究の動向を理解し、現地の課題やニーズを自ら発見・解決するための素養を身につける。
■内 容
ネパールに対する理解を深めるためのセミナー
日本や欧米で博士号を取得したネパール人研究者たちの組織であるKathmandu Institute of Applied Sciences (KIAS)とHIGOプログラムのジョイントセミナーを開催。ネパールの文化、民主化の歴史、地域ごとの民族性の違いに加え、絶滅危惧種を維持するための取組みや薬用植物の産業への利用ほかに関する講義を受けた。
ネパールの医療を学ぶ機会 1)政府機関
・Department of Drug Administration(DDA), National Medicine Laboratory
DDAは、薬の製造、品質管理、輸出入、販売などについて認可・取締を行う政府機関である。HPLCなどの分析装置、微生物の混入検査などを行う施設を見学した。
・National Ayurveda Research And Training Center (NATRC)
アーユルヴェーダの専門家の育成や治療などを行う国立研究機関。内科医による講義を通じて、哲学と薬学を融合させ、症状の治療のみならず、病気の根本的な原因を突き止めて治すというアーユルヴェーダの考え方を学んだ。また、伝統医療と西洋医療をうまく融合させた治療の現場を見学できた。
ネパールの医療を学ぶ機会 2)民間組織
・Helping Hands Community Hospital(HHCH)(NGOが運営する病院)
1989年にHelping HandsというNGOを設立し、無医村地域での無料巡回治療などを行っていたが、2008年、首都カトマンズに100床からなるHHCHを設立。現在、1日あたり400人の外来患者が訪れている。
病院長と薬剤部長から病院の沿革・概要に加え、1991年以降のネパールの医療政策(感染症・生活習慣病対策、医療保険制度の構築など)、大学や病院での薬剤師教育の動向と諸課題についての講義を受けた。その後、病院の薬局・病棟などの施設を見学。参加学生らは、ネパールの病院は、カルテ・処方箋などの記録・管理を行わず、患者自身にまかせているため、患者と医師、病院間で既往歴や治療の情報を共有するなどの連携ができていないという問題があることを知った。
・Center for Research on Environment, Health and Population Activities (CREHPA)
CRE`HPAはNPOによるコンサルタント・研究機関であり、ネパールの「性と生殖に関する健康/権利」についての調査・研究をふまえ、新たな政策の提言、人材育成などを行っている。研究者らによる家族計画政策や妊娠・中絶に関する講義を受け、①10代前半の少女の早すぎる結婚・出産、②望まない妊娠や男児選好(娘より息子を重視)による中絶などの問題があることを知った。
ネパールの医療を学ぶ機会 3)大 学
・カトマンズ大学薬学部および大学病院
薬学部の講義室・実習室を見学後、大学病院にて、薬剤師との意見交換、生活習慣病に関する外来・入院病棟を見学した。大学病院は、地域住民にも低コストで医療サービスを提供しており、COPDや糖尿病などについて、薬剤師による服薬指導も活発であることを知った。
・トリプバン大学(国立大学) Research Centre for Applied Science and Technology (RECAST)
教員によるRECASTの概要説明と大学院生の研究紹介があった。HIGOプログラム生も、熊本大学およびHIGOプログラム、そして各自の研究室や研究内容を英語で紹介。その後、研究所などの施設を見学した。
ネパールの医療を学ぶ機会 4)日本からの支援
・JICAネパール事務所
JICAネパールの沿革や理念に加え、現地の医療の質の向上と人材育成などに対するJICAの支援について、ネパール人職員による講義を受けた。さらに、熊本大学保健分野出身の在外健康管理員から、ネパールにおける医療とその課題、日本の医療との違いなどについての講義に加え、海外青年協力隊や民間の医療コンサルタントとして、ベトナムやキューバなどの病院で活躍してきたキャリアパス、国際協力に必要な素養などについてのお話も伺った。参加学生は、海外で働くために必要な考え方、国際貢献に対する思いなどについて積極的な質問。ネパール人と日本人の意識の違いなどについて知ることができた。
ネパールの医療を学ぶ機会 5)文化遺産の視察
Bhaktapur Durbar Square、Swayambhunath Stupa、Pashupatinath Templeなど、仏教とヒンズー教の寺社を訪れ、死体を焼却して川に流す儀式など、日本では馴染みのない宗教習慣を知ることができた。また、ネパール地震から2年半後の市街の再興の現状を垣間見ることもできた。
インターンシップを終えて
昨年度、ネパールにて「医療」をテーマとしたインターンシップを実施予定であった。しかし、平成28年熊本地震を受け、同じ大地震を経験したネパールの「災害マネジメント」にテーマを変更して実施した。今年度は、政府、大学、民間組織、JICAなど様々な立場からネパールの医療政策、研究、教育、医薬品業界の動向などを学ぶことができた。実施の1ヶ月以上前から、事前勉強会を開催し、熊本大学やHIGOプログラム、各自が所属する研究室や自身の研究内容を紹介するためのプレゼンの準備を行った。
参加学生らは日頃、COPDや糖尿病などの疾患や製剤あるいは生殖工学などの研究を行っているため、ネパールの大学や研究機関で類似したテーマを扱っていることを知り、大きな関心を示していた。
研修途中および最終日には、学習内容を振り返り、①医療施設へのアクセス、医療・研究などの設備のレベルに地域格差がある、②日本から最新の分析機器などが導入されても、使用法を習得しきれておらず、うまく活用できていない、③ネパールでは避妊の知識、技術などの啓発が不十分であり、望まれない妊娠による中絶も頻繁に行われている、④ネパールでは優秀な人材が外国へ流出してしまうなどの課題を挙げていた。
8日間を通して「将来途上国の課題解決に貢献したい」という思いも芽生えた貴重な機会となった。
■参加した学生の声
ネパールの医療システムは未だ完成しておらず、保険制度やカルテの管理、過疎地の医療ほか多くの課題があり、今すぐ解決することは難しい。しかし、我々先進国は、今回お会いしたJICAの職員のように「発展途上国の医療を良くしたい」と考える人々を全力で支援する体制を作っていくべきである。また、私たちHIGOプログラム生も、健康生命科学のパイオニアとしてグローカルに活躍すべく、様々な視点から世界の状況を見て感じ、考え続けていく必要がある。
これまでのイメージ以上に、先進国とネパールなどの途上国には大きな差があり、さらに、ネパール国内でも格差があること、そして、それを打破して今後発展していくにはこれまでの政策ややり方だけではおそらく難しいことを知った。ネパールで発見した真のニーズに、我々の研究や学問が貢献できるよう努力すべきである。そして、その技術や思いを、当事者であるネパール国内の若い世代に引き継ぐ必要がある。HIGOプログラムとインターンシップで得た経験を活かして将来発展途上国内でも役に立つ研究やビジネスを行っていきたい。
Like all of south Asian countries Nepal facing problem about public health, environment pollution, child marriage, political crisis and student politics. However, Nepali people have are trying to develop their country. Being a student from Bangladesh, also a developing country in South Asia, I hope one day we shall overcome all problems and issues by making collaboration other developed countries.