Internship
インターンシップ
■インドインターンシップ 2018.11.16– 11.24
■参加者
HIGOプログラム(学生6名、教員2名)
■目 的
インドは広大な面積と世界第2位の12億人超の人口を有する多民族国家であり、近年の経済成長に伴って日本からの企業進出も増加している。そこで、インドの歴史や政治・文化に触れ、医療・科学技術振興や日本とインドの連携などについて学ぶため、政府機関、大学、製薬企業などを訪問する。バングラデシュやネパールに続き、インドのハイデラバード市でインターンシップを実施することで、南アジア地域の現状や課題への理解を深め、グローカルな問題解決に必要な素養を身につける。
■内 容
オリエンテーション
Ashoka Institute of Engineering and Technologyで、インドの歴史や文化、政治、経済、医療などに関する包括的な講義を受けた。インドが力を入れているITとヘルスケアを組み合わせた“Internet of Medical Things (IoMT)”についても学んだ。インドの講師陣から宗教、民族、言語、食文化などの多様性を学んだことで、インドインターンシップの行程で訪れた様々な機関や活動を理解するための基礎知識を得ることができた。
民間非営利組織、社会活動
Telangana Tribal Welfare Residential Educational Institutions Societyを訪れ、カースト意識や差別が残る地方の現状やNGOによる教育支援活動について説明を受けた。その後、テランガナ州の農村部を実際に訪れ、女性や子どもに対する教育の場を見学した。The Social Welfare Residential Government Degree College for Girlsでは、学生たちは学校で学ぶ女子学生たちから歓待を受け、日本の教育システムや女性の社会進出などについて質問を受けた。他にも、SWAEROES Schools for Childrenやコミュニティの集会場を訪れ、アウトカーストから抜け出すための教育の重要性を学んだ。また、ハイデラバードのムスリム居住地区で、貧困家庭のムスリムの女性を支援するNGOのSAFA Foundationを訪れた。創設者から、カバンの作成・販売などを通じてムスリムの女性たちを支援する取り組みの概要と今後の展開などを聞いた。
大学(研究・教育・イノベーション)
Jawaharlal Nehru Technological University Hyderabad (JNTUH)の薬学や環境学分野の研究室や、インドトップクラスの工科大学である Indian Institute of Technology Hyderabad (IIT-H)のバイオ医学分野の研究室を訪問し、インドの大学の研究水準やラボの環境について理解を深めた。また、JNTUHでは、HIGO生6人が学生や教員を前に自らの研究について発表し、研究交流を行った。International Institute of Information Technology Hyderabadでは、官民でベンチャーを育成・支援するT-Hubを訪れ、IT技術の実用化に優れたハイデラバードの起業の現場を目にすることができた。
JICAフレンドシッププロジェクト
IIT-Hに駐在するJICA専門家から、「日印産学研究ネットワーク構築支援プロジェクト」という、IIT-Hと日本の大学や企業との間の共同研究や研究者交流について説明を受けた。JICAがインドの人的資源開発を行う背景にある日印関係や、他国の開発援助機関との競合などについても意見交換した。また、HIGO生4人がIIT-Hの環境技術を紹介するJICAのビデオ作成に協力し、水俣インターンシップなどで学んだ経験をもとに環境保護の重要性を訴えた。
製薬企業
インドを代表する製薬企業であるDr. Reddy’s Laboratories Ltd.を訪問した。ジェネリック医薬品を主に製造する同社は、大規模な国内市場だけでなく、欧州などへの輸出も行っていることから、医薬品のマーケット情勢やグローバルな事業戦略について学んだ。また、同社の分析施設や製剤施設も見学し、ITを用いた医薬品保管システムや原薬の製剤化工程の説明を受けた。
インターンシップを終えて
今回のインターンシップでは、学生の専門である医学・薬学分野だけを学ぶのではなく、インドの歴史や文化、経済・社会問題に広くふれることで、現在のインドを多面的に理解することを目的とした。人口680万人を超えるインド中部の大都市であり、IT産業で活気付く一方、貧困に苦しむムスリム居住区やカーストの問題を抱えるハイデラバードは、学生が約1週間“expose”されることで多くを学ぶのに適した土地だったと言える。実際に学生たちは、ハイデラバードの大学の薬学・医学・工学の研究室や製薬企業を訪問して、それぞれが有する機材や技術レベルの差の大きさに驚いたり、就職口に比した卒業生数の多さから起業せざるを得ない事情を認識したりと、大規模な人口を抱えるインドの今を学んでいた。また、急激な経済成長の影に隠れがちな少数集団の貧困や差別の問題に目を向け、経済・社会的な平等と持続的な成長をどう両立するのか、学生それぞれが自問していた。インドでの「衝撃的毎日」の経験から、自国における研究や生活の環境を改めて見直す機会にもなり、グローカルな視座を得る貴重な体験となった。
■参加した学生の声
インドは長い歴史から成立した伝説・神話を起源として、多くの宗教が栄え、また、その宗教や民族、地域により多様な言語や食文化、伝統医療が発達したことを知った。
本インターンシップを経て、インドの経済格差を持続的に解決していくために、経済支援や専門技術・知識を提供するうえで、文化や宗教の違いを十分に考慮し、その地域に寄り添う戦略を提示することが重要であると感じた。
This internship was a wonderful opportunity to have a deep impression about India from socio-cultural aspects and recent development of science and technology.