Internship
インターンシップ
■佐渡・上天草インターンシップ 2018.8.29-9.1, 11.23, 2019.2
■参加者
HIGOプログラム生2名、薬学部生1名、教員3名
■目 的
天草地域は人口減少、少子高齢化の進展に伴い、医療提供体制に多くの問題を抱える地域の一つである。これまで、HIGOプログラムの行政インターンシップを5年間継続して実施し、天草地域の行政・医療関係者との多職種連携のもとに地域医療の課題解決に向けた継続的な取組を行ってきた。H30年度は天草地域と同じへき地医療問題を抱え、さらに離島という特殊な環境下にある新潟県佐渡市を訪問し、佐渡市にて実施されている成功事例の地域連携医療ネットワークシステム「さどひまわりネット」の現状・課題を、多職種の視点から学ぶ。更に、ネットワークシステムの天草地域への展開について考える。
■内 容
概要
今年度のインターンシップは、前半に新潟県佐渡市の地域医療の現状、さらに課題解決のために構築された「さどひまわりネット」について運営側、ユーザー側の視点から学んだ。後半に、上天草市にて佐渡市での研修の報告を行い、佐渡市で構築されている医療ネットワークの天草地域への応用の可能性について、行政関係者や医療従事者と討論した。インターンシップの企画・準備は、実施の1年前から佐渡市および上天草市において、行政職員や医療従事者との会議を綿密に行い、遂行した。
1日目(午前)
佐渡市役所にて、市民福祉部 高齢福祉課 地域包括ケア推進室および市民福祉部 市民福祉課 健康推進室の職員の方に、佐渡市の人口や産業の推移、医療・介護・福祉の社会保障体制の現状についてお伺いした。さらに、医療・福祉・介護の課題に対する佐渡市の様々な取り組みについて学んだ。
1日目(午後)
「さどひまわりネット」を利用している診療所および保険薬局を訪問し、実際にどのように使用しているのか、また、「さどひまわりネット」のユーザー側から見たメリットやこれからの課題についてお伺いした。訪問した医療機関ではセキュリティが高い、検診データ(一部)や他の医療機関の検査結果や診断結果を閲覧できる、電子カルテや電子薬歴システムのデータを自動更新してくれるなどの理由で繁用しているものの、他の医療機関では加入はしているが、実質、利用していない医療機関もあることがわかった。その理由として、使用する事例がよくわからない、ユーザー側が高齢であるなどが挙げられた。
2日目(午前)
「さどひまわりネット」を取り入れている介護老人保健施設・老人短期入所施設・居宅介護支援事業所を訪問し、福祉・介護の現場を見学した。さらに、介護現場における「さどひまわりネット」の使用状況、今後の活用についてお伺いした。介護施設での利用については、電子介護記録ソフトから「さどひまわりネット」へのデータの自動更新ができないため、両方の使用は2重入力の負担が大きいとのことで、使用までには至っていないのが現状とのことであった。しかし、この医療連携ネットワークシステムが介護の現場、特にケアマネージャーとの連絡に取り入れることが可能になれば、佐渡の福祉・介護の職場環境は改善できると期待しているとのことであった。
2日目(午後)
①JA新潟県厚生連 佐渡総合病院を訪問し、病棟、手術室、放射線治療室等を見学した。佐渡総合病院は救急、高度医療から予防、検診まで島内の医療の多くを担う佐渡島の中核の病院である。屋上にはヘリポートが設置されており、ドクターヘリは緊急時における患者の搬送に多く利用されている。
②さどひまわりネット事務室を訪問し、事務長より「さどひまわりネット」がどのように構築され、運営されているのかお伺いした。
③佐藤賢治院長より、佐渡市の社会保障(地域包括ケア)の課題と取り組みについてお伺いした。また、佐渡の医療人材獲得を目指して、島内の医療機関における職業別養成プログラムの標準化にむけた取り組みについてもお伺いした。また、「さどひまわりネット」の運営側からみた課題についてお伺いした。佐渡総合病院では、常勤の医師が少なく、新潟県厚生連系列からの出向の医師が多いため、病院内の医師の「さどひまわりネット」への理解度が低いのが問題であるとのことであった。また、「さどひまわりネット」の使用方法例をうまく提示できていないのも原因であるので、それについても今後、取り組んでいきたいとのことであった。
3日目(午前)
佐渡の産業遺産や重要な観光資源であるトキの関連施設を訪問し、島民の方々と交流しながら、佐渡市の歴史や基幹産業を学んだ。
3日目(午後)
2日間の研修成果として、①佐渡市の医療の現状と課題、②「さどひまわりネット」のユーザー側から見たメリット・課題、③「さどひまわりネット」の運営側から見たメリット・課題、④学生からの課題に対する解決策の提案をまとめ、佐藤先生に報告発表し、意見交換を行った。学生が提案したハード面の整備に関する解決策については、佐藤先生はあらゆる角度から実現可能であるか考えた上で既に対応されていた。結局は、ユーザー側の「さどひまわりネット」を便利という意識から、必要不可欠という意識への改革を成し遂げることが最も最短の解決策であるように感じた。
4日目
昨年度に引き続き「上天草けーな健康フェア2018」に参加した。健康フェアは家族一緒に健康や病気について学び、また、子供達が医療従事者の仕事を楽しく学ぶことを目的に開催されているイベントである。医師、薬剤師、看護師体験ブースや、生活習慣病の簡易検査、認知症予防のための運動法、手洗いや救急蘇生などを体験できるブースが出展されている。健康を題材にしたミニ講演も同時開催され、薬学部生が薬に関する講演を行った。天草郡市薬剤師会の先生方が災害時に使用されるモバイルファーマシーにて、錠剤や水剤の調剤が体験できるブースを担当し、HIGOプログラム生はAMS(Amakusa Medical Student)のメンバーと一緒に体育館にて、引き続き薬剤師体験を行う軟膏の調剤、薬剤監査の体験ブースを担当した。また、今年はHIGOプログラム生が薬学部の学生と一緒に子宮頸がん予防啓発のブースも出展した。
5日目
上天草市上天草総合病院にて、院内学会に参加発表した。院内学会では、HIGOプログラム生が佐渡での研修内容を発表した。上天草市と同様に深刻な医療課題を抱える佐渡市での社会保障の対策や人口減少に対する対策に関して質問があり、活発な質疑討論がなされた。
インターンシップを終えて
今年度は、離島の新潟県佐渡市を訪問し、地域連携医療ネットワークシステムの円滑な運用方法や課題について学んだ。地域連携医療ネットワークシステムは便利である反面、ユーザーによる利用頻度の違いが課題であることを学んだ。この課題を天草地域でも利用されている医療ネットワークの活用において共有化していきたいと思う。
■参加した学生の声
地域医療の現状について学ぶことができた。今後、患者を中心としたケアをしていくためには医療と介護、行政の協力が必須であることを学んだ。医療・介護の需要に対して医療・介護従事者が不十分であることを考慮すると、医療と介護が連携していくためには、互いの業務で手助けできる部分を補うことが重要だと思った。高齢化に対して、漠然と考えていたが、この行政インターンシップにより、その一端に触れることができ、考えるきっかけになった良い経験であった。
今回、訪問した佐渡市の医療ネットワークは、日本全国の中でも最先端のシステムである。しかし、ユーザー全員が十分に活用できていないのが現状であり、普段の業務に浸透させることの難しさを感じた。また、人口減少対策として、若者の定住より、地域医療が学べる研修機関として体制を整え、一定数の若者が佐渡市に循環するシステムを作る発想は非常に面白いと思った。